診療明細書の見方【基礎編】の第2弾です!
(第1弾はこちら 診療明細書の見方【基礎編】~①加算ってなに?~ )
今回は、診療明細書の中でも、処置や手術の項目を見るのに必要になってくる、「手技」について書いていきますね。
手技ってなに?
「手技(しゅぎ)」とは、ある診療行為をするときの「技術」「方法」を指します。
採血や検査をするときの技術(採血や検査の手技)や、手術の方法・技術(手術の手技)、という使い方をします。
診療報酬の名称の例でいうと、
採血の手技名・手技料 : B-V(静脈採血料)(D400)・ 30点
→静脈採血をしたときの技術名称と、技術料
手術の手技名・手技料 : 胃切除術(K648)・11,140点
→胃を切開する手術をした時の手術名と、技術料
というようになります。
手術の手技名は、一番後ろに「〇〇術」とつくことが多いです。「〇〇術」=手術の術名と思ってもらって大丈夫です◎
また、手技にはそれぞれアルファベットのコード名があります。
例えば、手術の場合「K▲▲」(通称Kコード)という、診療報酬上のコード名があります。
検査は「D▲▲」、処置は「J▲▲」などと、項目によってアルファベットが決まっています。
診療点数早見表 2018年4月版 [医科]2018年4月現在の診療報酬点数表 [ 医学通信社 ]
医療事務が実際に使う、この点数表にも、アルファベット順に手技と点数が載っています。
手技と薬剤の具体例
では具体的に、何かの手技を行った時の診療明細書を見てみましょう!
※ここからは、あくまでも元医療事務員が書く手技の例です。実際の診療とは異なります。
こんな感じで手技を読んでいくんだな、と理解してくださいね♪
例えば、日曜日に包丁で指を深く切ってしまい、3cmほどの切り傷ができ、縫う必要がありました。
その時の診療明細書はこのようになっていたとします。
創傷処理 4.筋肉、臓器に達しないもの(長径5センチメートル未満)
休日加算2 850点
キシロカイン注射液1% 5ml 5点
①手術の手技と手技料
縫うという行為は、手術に該当します。そのため、手技はKコードからはじまる、手術の項目の中から選ばれます。
使われた手技は、「K000 創傷処理」の、「4 筋肉、臓器に達しないもの(長径5センチメートル未満) 470点」でした。
え、さっき手術は「▲▲術」って書くって言ってたよ? と思われるかもしれませんが、、すべての手術を「▲▲術」と書く訳ではなく、「創傷処理」のような手術の手技名もあります。
創傷処理は、皮膚の傷を縫ったり、できものを切除(取り除く)ような手術を指します。
創傷処理には6つの分類があり、
【筋肉や臓器まで達している傷に対して、筋肉や臓器にも処理を行うのか】
【傷の大きさは直径何センチなのか】
によって、手技名が変わります。もちろん、点数も変わりますよ。
今回は、包丁での切り傷で、筋肉を傷つけるほどの傷ではなかったようです。
そのため、「4 筋肉、臓器に達しないもの(長径5センチメートル未満)」が算定されています。
また、日曜日(=休日)に緊急で手術をしたため、「休日加算2」が算定されています。
加算については、診療明細書の見方【基礎編】~①加算ってなに?~ にも書いた通り、基本の料金にプラスされるものです。
「休日加算2」は、厚労省に施設基準(厚労省が決めた病院の基準)の届出をしていない病院が算定できる加算です。言い換えれば、どこの病院でも、休日に緊急で手術を行えば算定される加算です。
「休日加算2」では、手術の手技料に80/100点の加算がつきます。
今回の例であれば、「創傷処理 4.筋肉、臓器に達しないもの(長径5センチメートル未満)」の470点に、「休日加算」で80/100点の加算をつけているため、
470点×80/100=376点
となり、休日加算でプラスされるのは、376点です。
これを、元々の手技料470点にプラスすると、
470点(元々の手技料)+376点(休日加算の点数)=846点
になりますが、診療報酬の点数は一の位を四捨五入するため、算定されるのは850点となります。
②手技に使った薬剤
手技の下には、その手技で使った薬剤や医療機材(骨折の時に使うプレートなどの材料)が書かれています。
今回は創傷処理で傷を縫い、薬剤として「キシロカイン注」を使いました。
キシロカイン注は、ちょっとした麻酔として使われる薬剤です。縫うのに、麻酔なしは痛いですからね。
また、手術時に全身麻酔などの麻酔を行った場合、麻酔料が手術の手技と別に算定されます。
麻酔料にもいろいろな種類があり、全身麻酔や静脈麻酔、それぞれに点数があり、加算もあります。
ちなみに、消毒液として「ネオヨジン」という薬剤がよく使われますが、ネオヨジンは薬剤の単価が小さいため、算定されないことが多いです。
手技によっては、特定の薬剤や医療器材が算定できない場合があります。
これは、「特定の薬剤や医療器材が、手技料の中に含まれている」という考え方になります。
診療報酬には、ある治療行為や薬剤が、手技料や管理料の中に含まれている、という考え方がよくあります。
「何で▲▲の薬を使ったのに、薬代は算定されていないんだろう?」ということがあれば、それは「手技料の中に薬代が含まれているから」という場合があります。
手技のまとめ
手技という考え方は、診療報酬上とても大事な考え方になります。
まとめると、
①手技は、診療行為の「技術」や「方法」のこと
②手技料には、それぞれアルファベットのコードがついている
③手技に対する加算がある
④手技の下には、手技で使った薬剤や医療器材が書いてある
⑤手技料の中に含まれる、薬剤や医療器材もある
ということになります!
また随時、診療明細書の見方【基礎編】を追加していきますので、お楽しみに♪