私が医療事務員現役時に一番深く関わっていた、産科医療についての第2弾です。
(第1弾はこちら:【産科医療について】妊娠・出産は、保険証が使えない?! )
今回取り上げるのは、正常分娩と異常分娩。
文字面も聞こえも、正常と異常って、なんか嫌な感じですよね。。
そんな繊細なお話について、元★医療事務員の立場から書いていきます!
正常分娩と異常分娩
母子手帳にも記載される、「正常分娩」と「異常分娩」という言葉。
なんか、正常・異常と言われると…出産したお母さん(ママ)から考えると、「私は異常だったんだ…」なんて、思ってしまいますよね。
でも、この正常と異常は、単に「医療的に」「保険診療的に」という意味合いです。
医学的に正常なのか、異常なのか、それだけの話です。「私は異常分娩だったから……」などと、お母さん(ママ)が気にする必要はありません。
これは個人的な意見でもありますが、
母子ともに健康に出産が出来たのなら、それだけで素晴らしいことです。生まれる方法が、経腟分娩なのか、帝王切開なのか。そんなことは、些細な事なんです。
日本の産科医療はとても発展していて、出産時に亡くなったり、そういったことは減っています。これは本当に、日本の産科医療の素晴らしい部分だと思います。
なので、経腟分娩だろうが帝王切開だろうが。出産時の方法なんて、本当に気にしなくても良いんです。
母子ともに健康であること。それが、何よりも一番大事で素敵なことだと、元★産婦人科担当者としては、心の底から思います。
正常分娩とは?
それではまず、正常分娩とはどんな状態なのか、みてみましょう!
出血量が少なく、たくさんの薬(陣痛誘発剤など)も使うことなく、経腟で(いわゆる「下から」)の分娩のことを、「正常分娩」と呼びます。
当時と今とで、基準は変わっているかもしれませんが、
私が医療事務をしていた時は、
「500ml以上の出血がないなら、正常」だと医師から聞いていました。
胎盤も出産時にきちんと外に出て、胎盤が子宮内に残ることもなく。赤ちゃんも胎盤も羊水も出血も何もかも、「医療的な」処置が必要なかった状態を、正常分娩と呼びます。
出産時に、産道でもある膣辺りを切開されるとは思いますが。それは「正常」の範囲内になります。
膣辺りを切開せずに分娩となると、下手すると肛門辺りまで裂けてしまう場合もあります。そうなると、裂けた部分を縫合(縫う)必要があり、「異常分娩」扱いとなる場合があります。
※医師が「縫合するための手技料が必要だった」と認めた場合。手技については(診療明細書の見方【基礎編】~②手技ってなに?~ )に詳しく書いています♪
それを防ぐために、医師が膣辺りへメスを入れています。なので、このくらいは正常分娩の範囲となります。
他にも、医師や看護師、助産師がなんらかの処置をすることもありますが、
いわゆる「下から生まれてきた」時にする処置は、基本的に「医療的な」処置にはなりません。
CHOCOA
異常分娩とは?
では、異常分娩とはどんな状態なのでしょう。
異常分娩は、分娩時(出産時)に「医療的な」「診療報酬的な」処置が必要となった分娩のことを指します。
異常分娩の例としては、帝王切開や吸引分娩のような分娩時の処置があります。
帝王切開(医療用語では、カイザー:C/S と言います)は、母体または胎児の状態に応じて予定して帝王切開をする場合と、緊急で行う場合があります。
どちらにしても、帝王切開には「K898 帝王切開術」という診療報酬上の手技名がついており、保険診療となります。
吸引分娩は、経腟分娩ではあるものの、分娩時に医師の助けが必要になった時に行われます。吸引分娩にも「K893 吸引娩出術」という手技名がついています。
帝王切開、吸引分娩のどちらも、手技名はKから始まっています。手術の手技はKから始まるように決まっているため、俗に「Kコード」と呼ばれたりもします。
※場吸引分娩は、異常分娩と見なされない場合もあります。それは、医師や保険者により様々な基準や理由があるからです。
私の経験だと、とある保険者から「吸引分娩は母子手帳としては異常分娩だけど、保険適応の手技(Kコード)にはあたらない」と言われたことがあります。この場合、生命保険などでは吸引分娩での給付金がもらえなかったりします。
吸引分娩で保険会社からの給付金をもらう時などは、医師や保険者へ相談してみてください。
他にも、ものすごくたくさん陣痛誘発剤を使ったり、出血量がものすごく多い場合なども異常分娩に含まれます。
ただし、この辺りは医師の判断にもよるため、確実に異常分娩扱いとなるのは、帝王切開をした場合と言えます。
なので、ものすごくザックリ言うと、「正常分娩以外は、異常分娩」とも言えます。
正常分娩と異常分娩のまとめ
正常分娩と異常分娩をそれぞれ見てきましたが、簡単にまとめてみましょう!
- 正常分娩:医療的な処置が必要ない、または処置も正常の範囲内で行った分娩
- 異常分娩:医療的な処置が必要となった分娩
こう並べてみると、正常と異常の差は「医療的な処置の有無」だけなんですよね。
また、医療的な処置というのも、
- 手術の手技(Kコード)があったかどうか
- 医師が異常分娩(正常分娩よりも処置が多かった)と判断するか
の2つになります。
ちなみに、医療的な処置をした場合は保険診療(保険証が使える治療)となり、正常分娩では、すべて自費となります。
すべて自費だった=正常分娩と考えても、そう間違いではありません。
次の記事では、正常分娩・異常分娩ごとの費用(自費・保険診療)について書いていきますね♪